運動と人生

 

運動するのがあまり好きではないのかな?と思われる男性がいました。ですから、あまりあれこれ用意せず、いちばん大事でシンプルな動作だけやっていただくことにしました。しかし、どうもそれすら嫌がっている様子。そこで、よく話を聴いてみると、「軍隊で何度も同じことをやらされた経験から、同じ動きばかりの運動は身体によくないと思っている」と言うのです。たしかにそれなら、納得です。「それならたくさんのバリエーションのある動きを、少しずつやってみるのはどうでしょう?」。すると、喜んでやっていただくことができました。

運動するのがあまり好きではないようだとお聞きしていた女性がいました。けれど、よく話をきいてみると「運動は嫌だけど、踊りは得意」というのです。手のしなやさは、たしかに素人ではありません。ならば、「手振りをつけて一歩踏み込み片足に体重を乗せて、踊っていただいたらいいじゃない?」 これはそのまま、ランジになります。ちょっと動きは小さいけれど。そんなプログラムをつくりましたら、本人もご家族もとても喜んでくださいました。

運動が嫌いではないけれど、あれこれ面倒なことを覚えるのが苦手な男性がいました。けれど、よく話を聞いてみると、「若い頃はスキーが大の得意」だったそうです。ならば、「スキーのボーゲンのように腰を落としてみたらどうだろう?」そのままスクワットとして足腰強化できますね。スキーが得意でよかったです。ボーゲンなら、嫌だと言わずに続けて取り組んでいただくことができました。

このように、認知症で意欲がないように見える人も、一人一人の歴史を聴けば、運動導入はいろいろ工夫ができます。大勢で体操するのもいいけれど、昔から体なじみのいい運動は、自信にあふれていた若い頃の記憶さえも、よみがえらせてくれるにちがいありません。

「体育の時間はいつもきまって見学していた、とか、字を書くなら得意だけど運動は苦手という人もいましたが、仲の良いお友だちが誘ってくれたおかげで、体操に参加してくれるようになっていきました」と、職員さんおっしゃいました。

「そうですね、動きだすきっかけは、まわりの人が作ってくれます。観察学習(モデリング)の機会が多くあるほどいいですね」と返事をしたところ、「認知症の人も学習するんですね」と言われました。

たしかにそうですね。認知症だからといって、学習できないのではないのです。記憶の乱れで混乱していた人も、まわりの人に寄り添われ、見守られ、励ましあいながら、元気になっていく姿を、認知症対応型の通所施設では見ることができます。

私が介護施設で学んだことは、人はどんな状況でも学ぶことができるということ。人の力ってすごいんです。

photo credit: The newbie photographer via photopin (license)

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