体が大事なわけをコミュニケーションから考えてみた-2010年東北理学療法学術大会セミナー抄録より-

 

2015年11月に仙台で開催される学術大会でセミナーを行います。そこであらためて5年前にも行った同様のセミナーの抄録を、データファイルからひっぱりだしてみました。5年前も今も、何ら大事なことは変わっていない、それどころかますます大事になってきていると感じます。

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「理学療法士という職業を通じて、わたしは社会において何を実現したいのか?どう実現できるのか?」仕事をしながら、何かあれば自分にこう問いかけるようにしている。コミュニケーションとは、人間同士が互いに何かを共有しようとする行為一般を意味する1)。誰と、何を語り、どんな現実を共有したいと望んでいるのか。答えは個人の中にもとからあるのではなく、日々協働している人々(患者・利用者も含め)と相互作用的に発見していくものであると考える。

理学療法士は、社会構造や制度の変化にともないさまざまな職種の人々と働くようになった。介護保険施設、訪問リハ、介護予防事業、健康増進等、日々、新しい信頼関係づくりの連続である。治療者としてだけではなく、リハビリテーションの場を構築するアドバイザーやプロデューサー、教育者としての役割も果たしているといえる。そこではトラブルを未然に防ぐ情報・意思伝達力、トラブルや葛藤を解決する問題解決力、心理的安心感や相互信頼感を生み出せるリーダーシップやコラボレーションなど、コミュニケーションを用いたソーシャルスキルが要求される。

また健康な人への予防的な関わりにおいては、人を惹きつける魅力が必要である。表情、声の調子、姿勢や態度が相手に快の感情を与えることではじめて、この人の話を聞いてみよう、質問のひとつでもしてみようという気持ちになるものである。

また、時に悲観的な現実のとらえ方をする相手の訴えを傾聴するとき、その立場を受け入れるだけでは片手落ちである。無力感しか残らない。相手を理解しようとする気持ちとともに、できるところの観察、よいところの評価、要求の把握、自己決定支援など明確な目的を持った質問をなげかけてはじめて、専門職である私たちが知恵を出し合う準備ができるのである。

他人の理解とは相手の内面の推測ではなく、ある種の身体的な応答の連続を共同作業で形成してゆくことである2)とされる。同情や同感にとどまったり一緒になって深刻になったりするのではなく、対話をする力が必要なのである。

引用 1)現代哲学事典:山崎正一、市川浩 講談社 1970 p225
2)環境に拡がる心~生態学的哲学の展望:河野哲也 勁草書房 2005 p127
参考 SAT法を学ぶ・宗像恒次 金子書房 2007

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他人の理解とは、身体的な応答の連続を共同作業で形成していくことなのだとすれば、「体を鍛える」とは、「コミュニケーション力を鍛える」ということとほぼ同義であり、体力をつけるとか、スポーツ競技が上手くなるとかいう事にとどまらない、人間としてきわめて根源的で重要な行為なのではないだろうかと思います。

介護の仕事をしていると、お年寄りが誰と話をするかで言っていることがまるで違う!という事件に遭遇することがあります。つまり、お年寄りが人をみて話を変えてしまうことがあるのです。「そんなこと、私聞いたことがない!」「あの人は、もっと〇〇な人だよね=」「みんなは知らないだろうけど、私にだけ本音を言ってくれるのよ」という、スタッフ間の心理的軋轢や、信頼関係を壊しかねないこともひっそりと水面下で起こっているかもしれないなあと思います。

そこまで行かなくても、「お医者さんの前では聞きたいことが聞けずに帰ってきてしまった」という経験をしたことがある人は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

相手の発する気配を察してしまう人は、言い出せないものです。気配を察するということは、相手のちょっとしたしぐさを自分の体の中で意味づけする行為です。「ああ、いまイライラしているなあ」「忙しそうだなあ」などです。この意味付けを間違うと、よけいな気回しをしてシンプルなやり取りができなくなります。

しかし、そんなときにも、自分の本来の体のありように戻ることができれば、相手と自分の違いを十分理解したうえで、自分のペースを保つことができます。「あなたはこうだけど、私はこう」とはっきり区別することが大事です。

これは、私自身の課題であり、気持ちで負けて言いたいことも言い出せなかった長い長い自分自身への反省でもあるのですが・・・。

他人と無関係で距離をおいて無視するか、融合し従属するか、融合し支配するか、融合しつつ協働するか。選ぶ選択肢は4通り。

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